~あの先生とお話ししてみた!~ ④ 後編
お花が好きな小関先生。
本企画のためにバラの写真を送ってくださいました!
板垣:地球市民教育やSDGs(持続可能な開発目標)は、ここ最近よく耳にしますね。地球規模の様々なテーマに対して「考える」ことが大切なのでしょうか?
小関先生(以下、小関):漠然と「考える」というよりも、「自分が大事にしているもの」と「アクション」を擦り合わせていく作業が大事だと思っています。
板垣:「自分が大事にしているもの」とどう行動するかの両面を考えるということですか。
小関:そうです。誰しも、心の奥の中に一番大事にしているもの、これだけは譲れないものがあると思います。そういう大事にしているものとアクションを擦り合わせていく作業が大切です。
さっきの花の世話じゃないけれど(前編参照)、何となく選択するのではなく、「僕は〇〇〇を大切に思っていて、だからこそ~~~を選択するんだ」という決断に至るまで考えることが大切なんだと思います。
板垣:なるほど。SDGsで提示されている各テーマを「ただ知るだけ」だったり「ただ考えるだけ」では足りないということでしょうか。
小関:そうですね。自分なりのこだわりを持って選択やアクションをしないとよく分からなくなってしまって、テレビでそう言っていたからとか、みんながそういうからというレベルで留まってしまう恐れがありますね。
板垣:少し漠然としていますね…。具体的にはどのような話でしょうか?
小関:そうですね、例えば、よく「マイ箸」とか言いますよね?
板垣:割り箸の代わりに何度も使う箸のことですね。
小関:でも、日本製の割り箸の中には、木材の切れ端の廃材の部分を利用していることもあるんですよ。つまり、有効利用だとも言えます。
板垣:つまり、割り箸が一概に悪いとは言えないかもしれないってことですね。
小関:そうです。あとビニール袋も、多くのエコバックは石油由来の製品ですよね。たとえば、綿で作られたエコバックを持ってる人はそんなにいないんじゃないかな。仮に、エコバックを何枚も持っていて、とっかえひっかえ使っていたとしたら、全然環境に良くないですよね。一方で、同じビニール袋を何度も繰り返し使っている人は、ものすごいエコな活動してることになるかもしれません。
板垣:絶対に正しい選択かどうかは分からない、ということですね。
小関:沢山の選択肢がある中で、どれを選択するかは、その人個人に委ねられていると思います。エコバックを使うというのも選択の一つだし、同じビニール袋をずっと使い続けるというのも選択の一つ。
はたまた、エコバックを何枚も持つことだって選択肢の一つかもしれません。エコバックのファッション性を訴えて、たくさんのエコバックを持ち歩くことが、エコバックの普及に繋がり、結果的にエコになることだってあるかもしれません。
板垣:どれが正しいかは、実際にやってみなければ分からない。
小関:共通しているのは、ちゃんと問題を意識して、選択し、自分なりのアクションを起こしているということですね。
板垣:ただ何も考えずに過ごすのではなく、実現できる選択肢?可能性を見つけて、そのなかで自分がどれを選べばよいのかを考える作業。自分は何を大事にしているのか、そしてそれによって、どのように影響を与えるのか、を考えるということでしょうね。
板垣:自分が何を大事にしているのかを見つめ直す作業も入っていますね。なんだか「自分探しの旅」のようにも聞こえます。
小関:まさにその通りなんです。地球市民教育論の中には、「外に向かう旅」と「内に向かう旅」っていう二つの視点があります。
地球規模の問題、すなわち外の問題については、「マイ箸」や「エコバック」の議論からも分かったように、唯一絶対の正解はありません。どうすることが正しいのか、誰にも分からないんです。だからいろんな人がいろんなことを言っています。
でも自分はどうしたらいいのか、どうしたいのか、という内の問題は、自分の中にしか存在しません。様々なことを見聞きして、経験してきた中でこだわっていることを見つけ出し、その中でアクションを起こす。自分のこだわりから生まれたアクションが、地球規模の問題解決の糸口に繋がる可能性を秘めています。そのこだわりこそが、自分と世界を結んでいる一番の原点なはずですから。
板垣:地球が抱える問題というと私一人ではどうしようもできないと感じてしまいますが、むしろ私自身のこだわりから地球規模の問題を捉え直すと案外できることが多そうです。世界への影響は微々たるものかもしれませんが。
小関:でもSDGsは、そのような日常生活でできる小さなアクションを大事にしています。SDGsって国連で採択されたアジェンダ(議案書)が由来なんだけれど、SDGsの言葉が出てくるのはサブタイトルなんですよ。
板垣:“Transforming Our World: 2030 Agenda for Sustainable Development(我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)”の中に書かれている目標としてSDGsの17のゴールが設定されていますね。
小関:“Transforming”は「本質的に変えよう」という意味ですよね。本質的に変えるために、何を一番大事にしているかというと地域からのアクションなんです。日常生活からの小さなアクション。
僕はずっと「小さなトランスフォーメーション」という言葉を使っています。日常生活で少し変えてみようっていう小さなトランスフォーメーションがあちこちで共鳴して、だんだんと収斂されていくことで、SDGs、地球規模の問題の解決に向かうと思ってるんですよね。実際に、SDGsはそれを一番強く訴えているんです。
板垣:自分のこだわりから生まれる小さなアクション。そして小さなアクションによって生まれた小さなトランスフォーメーション。これが地球規模の問題にも繋がるわけですね。
小関:その通りです。だから僕の花の世話だって、小さなアクションの一つなんです。環境について考えてもらいたい本当に小さなアクション。花が好きな人同士が交流することによって花が増えていくっていうのは、「緑の豊かさも守ろう」という本当に小さなトランスフォーメーション。
板垣:でもその一方で雑草を抜いてると…。
小関:ハハハ、そうなんです!ディスアドバンテージが入ってくるんですよね。完全に正しいことなんかこの世の中にありえない。その中で、何を選択するか、自分はどうしたいのか、それをちゃんと考えていくことが、SDGsの、あるいは地球市民教育の一番大事なポイントだと思っています。
同時にそれは、自分が何を大事にして生きている人間なのかを知ることでもあるわけです。地球規模の問題にアクションを起こすということは、自分がどういう人間なのかもう一回見つめ直していくプロセスでもあるんです。
小関先生、ありがとうございました!!
次回もどうぞよろしくお願いします!