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用語集

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アイスブレイキング(ice-breaking)

氷(ice)のように緊張した雰囲気をほぐす(break)活動のこと。グローバル教育をもっともよく特徴づける学びのプロセスの1つ。 グローバル教育では、本格的なテーマ学習をする前に、安心感のある肯定的な雰囲気を作り出すために用いられている。 また、学習テーマに関連するアイスブレイキングは、テーマ学習への効果的な導入として利用されている。

イメージ?マップ(image map)

頭の中にあるイメージを絵や地図にして描いてみる活動のこと。 自分のイメージを描き出すことよって、自分の認識や価値観やステレオタイプを見つめなおしたり、具体的に検討したりしやすくなる。 グローバル教育では、未来のイメージ図を描くことにもよく用いられ、学習者どうしが不安や期待などを共有しやすくなる利点がある。

エンパワーメント(empowerment)

人とのつながりを通して、自分のなかにある可能性に気づき、内発的な力を引き出していくこと、またそうした力をつけていくこと。 自分自身の人生を決定する力や自分の置かれた状況を変えていく力が特に重視される。 この考えは、1980年代の半ばから、発展途上国の女性運動のなかで提起されるようになり、世界各地の女性運動に浸透してきた。 その後、いくつかの国際会議でも論じられ、開発や貧困の緩和のキーワードになっている。

オルタナティブ(alternative)

「代替可能な」「もう1つの」「既成の価値に囚われない」などと訳される多義語。 本書では、私たちの意思決定の重要性と多様な選択肢があるということを強調して、「選択可能なさまざまな」と訳出してある。 例えば、「オルタナティブな未来」とは、別な未来がもう1つだけあるということではなく、 私たちの意志で選ぶことのできる、さまざまな可能性に開かれた未来が複数あるということを意味している。

グローバル教育(global education)

1960年代に米国で生まれたとされるが、現在では世界各国で研究開発が行われている。 急速にグローバル化する世界の変化に教育が対応できないでいることを問題とし、地球時代にふさわしい新しい教育の実現が目指されている。 日本では、1970年代にいち早く紹介された米国の社会科教育として限定的にとらえる場合もあるが、 広い意味では、英国の「ワールド?スタディーズ」や多様化のすすむ「国際教育」など、「地球的視野(global perspective)」から地球規模の問題に取り組むすべての教育運動を総称している。

国際理解教育(国際教育)
(education for international understanding/international education)

第2次世界大戦後にユネスコによって推進されてきた教育。 世界の人々が、国境を越え理解し尊重しあうことで、世界平和の実現を目指すことを基本理念に掲げている。 74年のユネスコ国際教育勧告以降を「国際教育」と区別する場合もあるが、日本では「国際理解教育」という呼び方が定着している。 同勧告を契機として、国際理解教育(国際教育)は、環境、開発をはじめさまざまな地球規模の問題に取り組む教育として多様化している。

ジェンダー(gender)と性的指向(gender orientation)

ジェンダーとは、社会的?文化的に形成された男らしさと女らしさのことで、生物学上の性別を意味するセックス(sex)と区別されて用いられる。 ただし、セックスと同義に用いられることもあり、本書では文脈に応じて使い分けている。 また、人間の性を考察する他の要素として、性的指向がある。 これは、人間の性愛がどのような対象に向かうのかによって、異性愛、同性愛、両性愛の3つに分類される。 今日、性をめぐる問題は公正な地球社会を考える上で、きわめて重要なキーワードになっている。

シチズンシップ(citizenship)

「市民権」「市民性」などと訳される多義語。 本書では、「市民としての意識、権利、行動」と訳出し、文脈によって使い分けている。 シチズンシップは、市民革命の歴史がない日本人にとって馴染みのない言葉だが、急速にグローバル化する現代社会では、国を問わず、 グローバル?シチズンシップ(地球市民としての意識、権利、行動)について理解を深めていくことが求められている。

シミュレーション(simulation)

仮想現実をつくりだして模擬的に体験する活動のこと。 直接体験することが難しいような問題―例えば、南北問題や経済格差-でも、ゲーム的要素を取り入れ単純化することで、疑似体験することができる。 シミュレーションには、学習者が熱中しやすいという特徴があるが、単なる仮想ゲームで終わらせないためには、現実に照らして、 何を「実感」できるのか、どんな「気づき」があったのかをふりかえることが重要となる。

水平的思考(lateral thinking)

既存の考え方にとらわれず、創造的に思考することを特徴としている。 垂直的思考が多くのデータから、正しい答えを1つだけ導き出そうとする収束的思考あるのに対して、水平的思考は、 自由奔放に次々とアイディアを生み出していく拡散的思考として特徴づけられる。 また、垂直的思考は論理的だが、水平的思考は感性やインスピレーション、気づき、イメージなどを重視する点で連想的である。

ステレオタイプ(stereotype)

特定のメンバーが共通に受け入れているものの見方のうちで、過度に単純化された考えやイメージをステレオタイプと呼ぶ。 ステレオタイプは、個人的なものの見方というよりも、むしろ社会や文化のなかでパターン化されて受け継がれてきたものの見方を指している。 また、ステレオタイプのイメージには強い感情が伴うため、特定の個人やグループに対して、非現実的な敵意を生み出す場合もある。

スピリチュアリティ(spirituality)

「精神性」「魂」「霊性」などと訳される難解語。 本書では、「スピリチュアリティ(精神性?魂)」と訳出してある。 ホールパーソン(全人)の発達を目指すホリスティック教育のキーワードで、自己の深層の次元を表現する言葉。 「内へ向かう旅」を重視するパイクとセルビーのグローバル教育でも重要なキーワードになっている。 そこに宗教的な意味はなく、内面の深い次元で「つながりを求める心(プロセス)」と解釈されるべきもの。

セルフエスティーム(self-esteem)

「自己肯定感情」「自尊感情」などと訳される。 グローバル教育では、「自分のことを大切に思う気持」や「自分の可能性を信じること」が特に重視される。 自己に対する肯定的な気持がないところでは、さまざまな問題にリスクを覚悟して挑戦することができない。 また、自分を肯定的にとらえられないところでは、他の人のことも肯定的にとらえらえない可能性が高くなるといわれている。

タイム?ライン(time line)

時間軸にそって、自分の体験や社会の出来事を表現する活動のこと。 タイム?ラインとは、文字通り時間を表す直線ことで、その上に過去?現在?未来の出来事を書き込んでいく。 シンプルだが時間がつながりあっていることを実感できる手法の1つ。 今の自分や、現在の社会がどのように生まれてきたのかを検討しやすくなる。 また、時間の連続性について認識を深めることで、未来の世代に対する責任について考える良いきっかけとなる。

地球市民教育(education for global citizenship)

地球規模の問題に取り組む市民の間で「地球市民」という言葉が定着するにつれて市民権をえてきた言葉。 74年のユネスコ国際教育勧告以降、多様化し続ける「国際理解教育」を「地球市民教育」の概念で統合しようとする動きとも連動している。 英国やカナダでは、参加型民主主義を重視するシチズンシップ教育が、 同じく地球規模の公正を目指し民主的な変化のプロセスを求めるグローバル教育と融合するなかで、具体化してきたと考えられる。

トランスフォーメーション(transformation)

上辺だけの変化ではなく本質的な変化をあらわす言葉。 哲学をはじめさまざまな領域で使われている。 グローバル教育では、知識の伝達を意味する「トランスミッション(伝達)」と対置され、相互の学びあいから生まれる全般的な変化のプロセスを指す。 社会を視点にとれば、公正な地球社会へ向かう変化のプロセスのことであり、自己を視点にとれば、知識の獲得にとどまらない全人的な変化のプロセスを意味することになる。

74年ユネスコ国際教育勧告
(Recommendation concerning Education for International Understanding, Co-operation and Peace and Education relating to Human Rights and Fundamental Freedoms, 1974)

1974年の第18回ユネスコ総会で採択された「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育ならびに人権及び基本的自由についての教育に関する勧告」の略称。 国際理解教育は、国家を前提として、国家間?民族間の理解の促進を目指してきたが、この勧告を契機に、 環境、開発、人権などの地球規模の問題に取り組むという視点が新たに加えられた。 今日の国際理解教育(国際教育)の基礎になった勧告として広く知られている。

ファシリテーター(facilitator)

参加型学習では、教師や指導者のことを「ファシリテーター(促進者)」と呼んでいる。 学習者1人ひとりの体験や意見を引き出し、相互の学びあいを促進する人であることを表現したもの。 単なる「進行係」ではなく、教え?学びあうプロセスに進んで参加することが求められ、参加体験学習の学びの質を左右する重要な役割をになっている。

フォト?ランゲージ(photo language)

写真や絵を見ながら、想像力をはたらかせてメッセージを読み解く活動のこと。 同じ写真を見ても受け取り方はさまざまであることから、多様なものの見方を実感することができる。 また写真の読み取りには、自分たちの価値観や偏見が反映されやすいので、無意識のうちにかかえこんでいるステレオタイプに気づくこともできる。 さらには、写真の一部を読み解く練習を通して、断片的な情報を鵜呑みにすることの危険性を体感できる。

プラニング(planning)

参加?体験学習で学んだことをもとに、具体的な行動の計画を立てる活動のこと。 本書ではキーワードの「行動」とかかわるアクティビティのなかで、さまざまな「プラニング」の可能性が紹介されている。 学びを知識にとどめておかないためにも、今の自分にできる具体的で現実的な行動の計画を立てることが重要となる。 自分の身のまわり(「ローカル」)から、地球規模の問題(「グローバル」)にとりくむ意識を高めることができる。

ふりかえり(reflection)

アクティビティを行ったあとに、その体験や気づきをふりかえること、また、その時間のことを指す。 一般に、自己の内面を探求するプロセスであると同時に、参加者どうしが体験をわかちあうプロセス―「シェアリング」―を含む言葉として、広く用いられている。 グローバル教育の学びのプロセスのなかでも特に重視されており、「外ヘ向かう旅」と「内へ向かう旅」の双方に深く関わっている。

ブレインストーミング(brainstorming)

米国のオズボーン(A.Osborn)が考案した創造的な発想法。 特定のものの見方で凝り固まってしまった脳を、嵐のようにかき回してもみほぐすという意味。 「短い言葉で、批判せず、質より量で、大胆な意見を」という4つのルールがあるといわれている。 グローバル教育では、特に「どんな意見も批判せず受け入れること」が重視され、出された意見やアイディアをつなげていく作業がこれに続く。

ホモフォビア(homophobia)

同性愛に対する嫌悪感や恐怖感のこと。 世界の9割以上が異性愛者だといわれる現代社会では、同性愛者に対して、差別や偏見の意識が生まれやすい状況にある。 その根底には、「気持が悪い」「理解できない」という否定的な感情があり、同性愛者への不理解が差別を生み出す原因になっている。

ホリスティック(holistic)

「全体的」「包括的」と訳される難解語。 全体をバラバラの部分に分けて分析する「機械論的世界観」に反対して、各部分のつながりを重視し全体的にものごとをとらえようとする。 本書では、つながり重視の思想であることを強調して、「全連関的」と訳出してある。 現代物理学をはじめ、医療、心理療法、教育などのさまざまな領域で用いられ、既存のパラダイムを問い直す思想として注目を集めている。

マイノリティ(minority/minorities)

「少数民族」「少数集団」と訳されている。 もともとは、人種や民族に関して、少数派である人たちを指していたが、現在では、現代社会のさまざまな領域で虐げられている人たちを広く意味している。 このような広い意味では、アイヌ民族や在日韓国?朝鮮人などの民族マイノリティだけでなく、 女性、子ども、障害者、高齢者、被差別部落出身者、HIV感染者、ホームレス、ゲイ、レズビアンなどもマイノリティであると考えられる。

メディア?リテラシー(media literacy)

新聞や雑誌、テレビなどのメディアを批判的に読み解く能力のこと。 また、メディアの特性を理解して適切に利用したり、メディアからの情報を取捨選択して活用する能力も含んでいる。 リテラシーとは、「読み書き能力」のことで、文字を知ることは人間として生きる上で基本的な権利だと考えられてきた。 同様に、メディアの情報があふれる現代社会では、メディアを読み解き使いこなすことが、ますます重要になってきている。

ランキング(ranking)

単語や文章が書かれたカードなどを、あるテーマにそって順位づけする活動のこと。 上から1つずつ並べていく「はしご型ランキング」や上下を1つ決めてダイヤモンド型に並べていく「ダイヤモンド?ランキング」がよく用いられている。 順位づけには、学習者の価値観が反映されることになるので、自分のものの見方のふりかえりに活用できる。 また2人以上のグループで行う場合には、順位づけの根拠が話し合われることになり、参加者の問題解決へのアプローチの相違点や共通点が見えやすくなる。

ロールプレイ(role playing)

演劇のように、あらかじめ決められた役柄を演じてみることで、問題解決の方法をさぐる活動のこと。 ある役柄になりきることで、自分とは異なる立場やものの見方を理解しやすくなる。 また演じた役柄に対して共感が生まれやすく、さまざまな問題を自分の問題として引き受ける態度が育まれる。 他の演劇的手法としては、与えられた状況設定から創作劇や即興劇をつくる「クリエイティヴ?ドラマ」なども注目されている。

ワールド?スタディーズ(world studies)

1970年代以降に、英国の初等?中等教育に導入された学習プロジェクトのこと。 広い視野から、開発教育、多文化教育、人権教育、平和教育などの諸問題が扱われ、地球市民の育成を目指して、さまざまなカリキュラムや教材、教育方法の開発が行われた。 1980年代後半には日本にも紹介され、アクティビティを中心とする参加?体験学習が広まるきっかとなった。